耳管開放症(じかんかいほうしょう)
耳管(じかん)
耳管とは鼓室(こしつ)と咽頭(いんとう=のど)をつなぐ長さ約3.5cmの細い管で、周囲を骨、血管・筋・脂肪に囲まれています。
通常は閉鎖していて、嚥下(=飲み込むこと)によって開きます。
耳管は、中耳(鼓室~耳管)の圧平衡や貯留液の排泄、咽頭からの感染防御などの重要な役割を果たしています。
耳管開放症とは、通常は閉鎖している耳管が常時開放した状態です。そのため咽頭腔側の呼吸雑音や圧変化などが中耳側に伝わりやすくなります。その結果、自声強聴(自分の声がうるさいほどの音量で響くため話すと辛い)、耳閉感、呼吸音聴取(呼吸音がゴーゴーと響く)などの不快な症状をきたします 。
診断
重症の耳管開放症の場合は、診察時に鼓膜の動揺を確認することで診断が可能です。また当院に設置している耳管機能検査を用いて耳管の状態を調べることが出来ます。
傾向
耳管周囲の組織の虚脱(ボリュームの減少)が耳管開放の直接的原因になるため、脱水・体重減少によって耳管周囲の水分・脂肪量が減ると耳管は開放し易くなります。このため、しばらく飲食せずに身体を動かす仕事中(理・美容師・声楽家など)、最近体重が減ったという方にみられることが多いです。また季節では、たくさん汗をかく夏場に症状が出やすく、1日のうちでは朝型に症状を認めるケースが多いです。(寝ている間は飲食をしないため脱水傾向になるからです。)
治療
確定診断・疑い例となった場合、その重症度に合わせて治療、対処法の指導等を行います。
鼻すすりについて
幼少期から耳管開放症がある場合、鼻をすすることで耳管に陰圧をかけ、耳管を閉鎖させる方法を身につけている方がいらっしゃいます。しかしこれを長く続けていると、耳管・鼓室を通じて鼓膜にまで陰圧をかけ続けることになり、最悪の場合、真珠腫性中耳炎になってしまうケースもあります。耳管を閉じるための鼻すすりを、自覚せずにおこなっている方も多くみられます。これまでの研究で、鼻すすり癖は成人までにやめることがとても大切だということが分かっています。
出典:Sonotubometryによる耳管開放症の重症度評価